自動車や住宅などの「大物」の共有から、携帯電話をスキャンして共有する自転車、傘、バスケットボール、おもちゃ、衣類などの「小物」に至るまで、シェアリングエコノミー(共有経済)は私たちの日常生活に徐々に浸透している。何でもシェアできて、シェアすれば価値があるように考えられていた時期もあった。人民日報が伝えた。
だが熱い期待を寄せられるこの経済の新業態が、「ニセのニーズ」や「ニセの共有」に絡め取られるような事態は防がなければならない。シェアリングエコノミーの発展の方向性を本当にしっかりと把握するには、3つのキーワードを理解する必要がある。
1つ目のキーワードは科学技術だ。シェアリングエコノミーのこれまでの経済スタイルと異なる重要な特徴は、科学技術の革新にある。これはシェアリングエコノミーが安定して発展するための基本だ。
人類は今、第4次産業革命(インダストリー4.0)を迎えている。今世紀初頭に始まったこの産業革命は、新技術が次々登場するのが特徴で、物理的世界、デジタル世界、生物的世界の境界線を絶えず乗り越え、その主要な推進力は進展を続ける科学技術の革新と常識をひっくり返す力だ。
シェアリングエコノミーは第4次産業革命から派生した経済の新業態である。シェア自転車を例に挙げると、GPSを利用し、従来の自転車産業の形態を変え、構造を変え、自転車本体に手を加え、さらには都市スロー交通システムを改良し、人々の文明レベルを引き上げた。こうした特徴は第4次産業革命で提唱される科学技術革新と常識をひっくり返す力という言い方に総括することができる。
よってシェアリングエコノミーの未来の発展方向は科学技術革新の軌道から絶対に離れてはならないといえる。こうしたオリジナルで独自の科学技術革新が、将来は経済社会の発展に尽きることのない原動力をもたらすことになる。
2つ目のキーワードは資源だ。第1次産業革命から現在までの間に、資源の消費量は増加を続けてきた。地球はただ1つしかなく、地球の資源は限られており、人類がどれくらい資源を利用するか、利用効率がどうかが変数になる。
現在、さまざまなシェアリングエコノミーの業態に資源浪費の現象がみられる。ある資源が別の資源(たとえば歩道、公園、緑地などの社会資源)の正当な利用効率の発揮を妨げる場合、私たちは前者の資源は後者の社会資源を生かしているのか、それとも浪費しているのか、また前者と後者の関係でどのようにバランスをとるかといったことを真剣に考えなければならない。こうした点をはっきりさせることが非常に重要だ。シェアリングエコノミーに対する資本の「熱が下がった」場合、浪費された資源を回復することは難しく、残されたバブル状態は長らく存在し、結局割を食うのは政府と一般の人々だからだ。
3つ目のキーワードは文明だ。物質的に非常に豊富である時、物質が破壊されても人々の心の道徳律がかき立てられることはほとんどない。これは実は人の生まれながらの性質と後天的で他律的な作用との「二元的な戦い」なのだ。人類が未開の暮らしをしていた頃は、それぞれの個体が自然界から得られる物質には限りがあり、共有の意識はなかった。物質を獲得する力が強まるにつれ、人類は共有を試みるようになり、共有をめぐる道徳文明システムを作り上げてきた。だがそれにともなって問題も発生し、人類が物質を獲得し、自然を変えることが容易になればなるほど、元々物質に依拠していた文明システムがしばしば侵食される可能性が出てきた。
ドイツの思想家シラーは「美的書簡」の中で、「文明の最も重要な任務の一つは、人がその純粋な物的世界の中で形式による支配を受けるようにすること、人が美の王国の到達し得る範囲内で審美的な人となることである」と述べている。現代社会において、シェアリングエコノミーの発展が直面する課題は実はとても大きい。社会の文明レベルと人々の素質が幅広く向上することが、供給経済がそれ自体の価値観と道徳秩序を形成するための土台になる。これはシェアリングエコノミーの前提であり、現代人の使命であるともいえる。